松本は、宿を選ぶときに迷いにくい町です。というのも、市街地がコンパクトで、松本城も中町通りも縄手通りも、たいていの宿から歩けてしまうからです。

ただ、それは裏を返すと「町なかの宿ならどこでも大差ない」ということでもあります。松本で本当に差がつくのは、翌朝どこへ向かうかです。上高地なのか、美ヶ原なのか、それとも町でもう一日ゆっくりするのか。ここが決まると、泊まるべきエリアは自然に絞られます。

この記事では、松本の宿を「翌朝の行き先」から逆算して選ぶ方法を、エリア別に整理します。

松本の市街地は、どこに泊まっても観光の距離は変わらない

まず前提として、松本の見どころは駅から半径2キロほどに収まっています。

国宝松本城は、JR松本駅から徒歩でおよそ20分。市内を回る周遊バス「タウンスニーカー」の北コースなら、松本駅お城口から「松本城・市役所前」まで乗車時間5分から10分ほどです。城の手前には蔵造りの店が並ぶ中町通りがあり、女鳥羽川沿いには縄手通りが伸びています。この一帯はすべて歩いてつながっています。

つまり、駅前に泊まってもお城の近くに泊まっても、日中の観光にかかる時間はほとんど変わりません。「観光地に近い宿」を血眼で探す意味が、松本では薄いということです。

宿泊業の側から見ると、こういう町では宿選びの基準が「近さ」から「朝と夜をどう過ごすか」に移ります。そして松本の場合、その朝の使い道が他の都市よりはっきりしています。松本に泊まる人の多くは、翌朝どこかの山へ向かうからです。

差がつくのは「翌朝どの山へ向かうか」

松本が観光の拠点として強いのは、北アルプスの玄関口だからです。ただ、その玄関の開き方が行き先によってかなり違います。

上高地へ向かうなら、朝の早さがすべて

上高地は通年マイカー規制が敷かれていて、自家用車では入れません。誰もが公共交通か乗り換えのシャトルバスで入ることになります。

松本側からのルートは主に3つです。

ひとつは、松本駅からアルピコ交通上高地線で終点の新島々駅までおよそ30分、そこから路線バスに乗り換えておよそ65分。合計でおよそ95分の道のりです。本数が多く、いちばん使いやすいルートですが、バスは予約優先なので予定が決まっているなら先に押さえておくのが安心です。

もうひとつは、松本バスターミナルから上高地バスターミナルへの直通バス(ナショナルパークライナー)です。乗り換えなしでおよそ90分。ただし1日2便程度と本数が限られ、主に早朝の出発で、完全事前予約制です。

そして車の場合は、長野自動車道の松本インターチェンジから国道158号を走り、沢渡(さわんど)の駐車場で車を置いてシャトルバスに乗り換えます。松本インターから沢渡までおよそ40分から60分、沢渡から上高地までシャトルバスでおよそ30分です。

ここから見えてくるのは、上高地は「思い立って昼から行く場所」ではないということです。朝いちばんの便に乗れるかどうかが、その日の持ち時間をほぼ決めてしまいます。前夜に松本へ入っておく理由がここにあります。

なお上高地には開山期間があり、2026年は4月17日から11月15日までが路線バスの運行期間として案内されています。季節によっては入れない、という前提も頭に入れておいてください。時刻表や予約の要否は年ごとに変わるので、アルピコ交通の公式サイトで最新の情報を確認してください。

美ヶ原へ向かうなら、泊まる場所そのものが乗り場になる

もうひとつの人気の行き先が、標高2,000メートルの高原、美ヶ原です。

こちらは面白い構造をしています。松本市の観光協会が案内している美ヶ原高原直行バスは、松本駅アルプス口を出たあと、美ヶ原温泉、浅間温泉、美鈴湖、思い出の丘を経て、終点の美ヶ原自然保護センターへ向かいます。所要はおよそ80分です。

つまり、松本のふたつの温泉地は、美ヶ原へ向かうバスの経路上にあるということです。温泉宿に泊まれば、翌朝わざわざ駅へ戻らずに、宿の近くのバス停から高原へ向かえます。

この直行バスは事前予約・事前決済制で、運賃は松本駅から終点までおとな片道1,500円。乗車の2日前までに予約すると1,200円になる早割もあります(席数限定)。空席があれば出発の15分前まで当日予約もできます。

運行期間は限られていて、2026年度は土曜・日曜・祝日のみの運行が6月6日から10月12日まで、毎日運行が7月13日から8月31日までとされています。冬に美ヶ原を目当てに温泉宿を取っても、このバスは走っていません。運行日程や運賃は年ごとに変わるため、必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。

エリア別・松本の宿の選び方

以上を踏まえて、松本の宿泊エリアを4つに分けて整理します。

松本駅周辺:翌朝どこへでも動ける保険

上高地へ向かうにも、名古屋や東京へ帰るにも、いちばん融通が利くのが駅前です。上高地線のホームも松本バスターミナルも駅のすぐそばなので、早朝出発の日は荷物を持って歩く距離が短いほど助かります。

ビジネスホテルが多く、価格帯も比較的読みやすいエリアです。ひとり旅や、日程がまだ固まっていない旅、翌朝が早い旅に向いています。

なお、松本駅にはお城側の「お城口(東口)」と反対側の「アルプス口(西口)」があり、美ヶ原直行バスはアルプス口発です。同じ駅前でも出口が違うと少し歩くので、予約の前に地図で確認しておくと安心です。

向いている旅行スタイル:翌朝上高地へ向かう、公共交通メインで動く、荷物を持っての移動を最小限にしたい。

松本城・中町・縄手周辺:夜と朝に町を歩きたい人へ

町の中心に泊まる価値は、夜と朝にあります。

蔵造りの中町通りや、女鳥羽川沿いの縄手通りは、日中は人が多いエリアですが、夕方に店が閉まったあとは静かになります。松本には夜遅くまで開いている小さな店も多く、そばと地酒を軽く楽しんでから歩いて帰れるのは、まちなかに泊まった人の特権です。

朝も同じで、松本城の内堀の外側は誰でも入れる公園として整備されているので、開場前の早い時間でも堀ごしに天守を眺められます。人の少ない時間帯にお堀端を歩けるのは、泊まった人だけの時間です。

向いている旅行スタイル:夜の町歩きと朝の散歩を楽しみたい、松本を目的地として味わいたい、車を使わない。

浅間温泉:市街地に近い温泉地

松本駅から路線バスでおよそ20分ほどの位置にある温泉地です。市街地からそう遠くないのに、宿に着けば温泉旅館の雰囲気に切り替わります。

美ヶ原直行バスの経路上にあるため、翌朝そのまま高原へ向かえるのが強みです。旅館の数もそれなりにあり、価格帯の幅も広めです。

向いている旅行スタイル:温泉に入りたいが市街地からも離れたくない、翌朝美ヶ原へ向かう、家族やカップルでのんびり。

美ヶ原温泉:静かに過ごしたい人向け

名前に美ヶ原とありますが、美ヶ原高原そのものではなく、松本市街の東側にある温泉地です。浅間温泉より落ち着いた雰囲気で、宿の数も控えめです。

こちらも美ヶ原直行バスの経路上にあります。静かに過ごしたい人、宿の中で完結する滞在をしたい人に向いています。

向いている旅行スタイル:静けさを優先したい、宿で過ごす時間を長く取りたい、翌朝美ヶ原へ向かう。

記念日の旅などで、料理や露天風呂までしっかり選びたい場合は、浅間温泉や美ヶ原温泉の上質な旅館を一休.comのような高価格帯に強いサイトで見ておくと、条件を絞りやすくなります。

日程別・宿の組み方

1泊なら、駅前かまちなかで固める

松本城と町歩きが目的なら、1泊は駅前かまちなか。温泉地に出てしまうと、往復のバスに小一時間を使うことになります。

2泊で上高地も入れるなら、1泊目を駅前に

上高地は朝いちばんに入りたいので、前夜は駅前に泊まって早朝の便に乗るのが現実的です。上高地から戻ったあと、2泊目を温泉地に移すという組み方もできますが、宿の移動は旅程全体で1回までに抑えたほうが体力的にはラクです。

上高地に泊まるという選択肢もあります。宿の数が限られていて予約は取りにくいものの、日帰りの人が引いたあとの静けさと朝の空気は、泊まった人だけのものです。狙うなら早めに動いてください。

松本を中部旅の一部にするなら

松本は、飛騨高山や金沢と組み合わせやすい位置にあります。中部を縦に巡る旅の組み立て方は金沢と飛騨高山を巡る2泊3日モデルコース|白川郷もつないで効率よく飛騨高山1泊2日のモデルコース — 古い町並みと白川郷を効率よく巡るでまとめています。金沢の宿選びは金沢はどこに泊まる?金沢駅・近江町・香林坊・ひがし茶屋街、エリア別の選び方、東海方面の拠点は名古屋はどこに泊まる?名古屋駅・栄・金山、エリア別の選び方を参考にしてみてください。

予約の前に知っておきたいこと

松本市では、2026年6月1日の宿泊分から宿泊税が導入されました。税額は1人1泊につき200円(うち100円は県税)で、2029年6月1日以降は300円になる予定です。ただし、1人1泊あたりの宿泊料金(素泊まり・消費税抜き)が6,000円未満の場合は課税が減免されます。予約サイトの表示価格に含まれているか現地徴収かは宿によって扱いが違うので、予約画面で確認しておくと会計時に慌てません。詳細は松本市の公式サイトをご確認ください。

松本城については、開場は8時30分から17時(最終入場16時30分)で、年末を除き無休です。ゴールデンウィークとお盆の期間は8時から18時に延長されます。天守内の平均観覧所要時間は45分から60分ほど。階段は約140段、最大斜度はおよそ61度とかなり急なので、歩きやすい靴で行ってください。観覧料は当日券よりも日時指定の電子チケットのほうが安く設定されています(目安として当日券がおとな1,300円、電子チケットが1,200円)。料金は改定されることがあるため、最新は松本城の公式サイトで確認してください。

なお、松本城には無料の市営駐車場がありません。車で行く場合は近隣の有料駐車場を使うことになります。

宿を取るタイミングについては、ホテルの予約はいつが一番安い?タイミング・曜日・セールのコツも参考にしてみてください。夏の週末や紅葉期は、上高地目当ての人で松本の宿が埋まりやすくなります。

松本の宿選びのまとめ

  • 松本の市街地はコンパクトで、日中の観光では宿の場所による差がほとんど出ない
  • 差が出るのは翌朝どこへ向かうか。上高地なら朝の早さ、美ヶ原ならバスの経路が効いてくる
  • 上高地は通年マイカー規制。松本駅からおよそ95分、直通便は早朝中心で完全予約制
  • 美ヶ原直行バスは松本駅アルプス口から美ヶ原温泉・浅間温泉を経由するため、温泉宿は乗り場としても便利。ただし運行期間は限られる
  • 町歩きが目的ならまちなか、翌朝が早いなら駅前、温泉と高原なら浅間温泉か美ヶ原温泉

まとめ

松本は「どこに泊まっても観光には困らない町」です。だからこそ、宿選びの基準を観光地との距離ではなく、翌朝の予定に置き換えると迷いが減ります。

上高地の朝いちの空気を狙うのか、美ヶ原の高原を歩くのか、それとも人の少ない朝のお堀端を散歩するのか。決めるべきはそこで、宿はその答えについてくるものです。

行き先の見当がついたら、楽天トラベルじゃらん一休.com、Booking.comなどで、そのエリアの宿を見比べてみてください。同じ松本でも、駅前のホテルと温泉地の旅館では、朝の始まり方がまったく違います。

よくある質問

Q. 上高地へ行くなら、松本のどこに泊まるのがいいですか?

松本駅周辺が無難です。上高地行きの上高地線も松本バスターミナルも駅のすぐそばにあり、早朝の出発でも荷物を持って歩く距離が短くて済みます。松本駅から上高地までは、上高地線でおよそ30分の新島々駅を経由し、路線バスでおよそ65分。直通の便もありますが本数が限られ、完全事前予約制です。バスの予約状況や運行期間はアルピコ交通の公式サイトで確認してください。

Q. 浅間温泉と美ヶ原温泉は、どちらに泊まるべきですか?

宿の数や食事処の選択肢を重視するなら浅間温泉、静けさを優先するなら美ヶ原温泉が向いています。どちらも美ヶ原高原直行バスの経路上にあるので、翌朝高原へ向かう予定なら利便性に大きな差はありません。ただしこの直行バスは運行期間が限られていて、2026年度は土日祝運行が6月から10月、毎日運行が7月中旬から8月末とされています。時期によっては走っていないため、公式サイトで運行日を確認してから宿を決めてください。

Q. 松本は1泊で足りますか?

松本城と中町通り、縄手通りを歩くだけなら1泊で十分回れます。ただ、上高地や美ヶ原まで足を伸ばすなら2泊はほしいところです。上高地は朝いちばんに入りたい場所なので、前夜に松本へ入り、翌朝早い便で向かう流れが現実的です。松本は飛騨高山や金沢とも組み合わせやすいので、中部を縦に巡る旅の途中に置くという考え方もあります。