「冬に福井へカニを食べに行こう」と決めたとき、多くの人は日程を「行けるとき」で決めます。
でも越前がには、行く月によって食べられるものが物理的に変わります。
理由は単純で、越前がにと呼ばれるカニが1種類ではないからです。3種類あって、それぞれ漁期が違う。しかも、その期間は法律で決まっています。
この記事では、その3つの窓を整理して、何を食べたいかから時期を逆算できるようにします。
越前がには3種類ある
まず、種類と漁期を並べます。
越前がに(雄のズワイガニ)11月6日から翌年3月20日まで。いわゆる「越前がに」の本体です。約4か月半あります。
せいこがに(雌のズワイガニ)11月6日から12月31日まで。外子と内子、かに味噌が絶品とされる小ぶりのカニです。資源保護のため2013年に漁期が短縮され、正味56日間しか獲れません。
水がに(ずぼがに)2月19日から3月20日まで。脱皮して間もない、殻のやわらかい雄です。脚の身が「ずぼっ」と抜けることからこう呼ばれます。こちらは正味30日間だけです。
解禁日はいずれも共通で、越前がにの漁は毎年11月6日の午前0時に始まります。
だから「いつ行くか」で3つの季節に分かれる
この3つの漁期が重ならないせいで、冬の越前海岸には性格の違う3つの時期が生まれます。
11月〜12月:雄とせいこがにの2種類
いちばん賑やかな時期です。越前がにとせいこがにが両方そろうのは、この2か月間だけ。せいこがにを食べたいなら、ここしかありません。
1月〜2月中旬:越前がにのみ
せいこがにが終わり、水がにはまだ始まっていない期間です。食べられるのは雄の越前がにだけになります。
2月19日〜3月20日:雄と水がにの2種類
水がにが解禁されて、再び2種類になります。ただしこの期間は1か月ありません。
つまり、2種類のカニを食べられるのは11〜12月と2月下旬以降だけで、1月から2月中旬は選択肢が1つになります。「冬ならいつでも同じ」ではないわけです。
値段は11月がいちばん高い
もうひとつ、時期を決める要素があります。価格です。
シーズン序盤の11月は、身入りが安定していることに加えて、年末の贈答需要が重なります。結果として、この時期がいちばん高くなります。年が明けると、比較的落ち着いてきます。
ここでトレードオフが生まれます。せいこがにを食べたい人は、必然的にいちばん高い時期に行くことになるのです。せいこがにの漁期が12月31日までだからです。
逆に、価格を抑えたいなら年明け以降が狙い目ですが、そのときせいこがにはもうありません。2月下旬まで待てば水がにが出てきて、こちらは脱皮後で身がみずみずしく、価格も手ごろです。地元で人気があるのはこの水がにだったりします。
繁忙期に安い在庫が出ない理由は直前予約と早割はどっちがお得?に書いたとおりで、11月から年末のカニ宿はまさにその典型です。日程が決まっているなら、早く動くほうが選択肢が残ります。
黄色いタグの意味
越前がにを名乗れるカニには、黄色いタグがついています。
これは福井県で水揚げされた本ズワイガニであることを示すブランドマークです。越前がには2018年に農林水産省の地理的表示保護制度(GI)に登録されていて、カニとしては全国で初めての登録でした。皇室に献上されるカニでもあります。
タグを見るとき、あわせて知っておきたいのが紅ズワイガニとの違いです。紅ズワイガニは漁期が9月から翌年5月末までと長く、漁獲量も多いため価格が手ごろです。おいしいカニですが、越前がにとは別のカニです。
「カニ」とだけ書かれたプランを見たときは、どの種類なのかを確認してみてください。値段の差には理由があります。
カニは宿で食べるもの
もうひとつ、実務的な話を。
越前がにを本気で食べるなら、日帰りの昼食では成立しません。フルコースで出てくると、刺身、焼き、茹で、甲羅、最後に雑炊、という流れになります。これを昼に食べて、その日のうちに移動して帰る、というのは物理的にきついです。
そして越前海岸は、そもそも交通が弱いエリアです。公共交通の本数が限られるため、車か宿の送迎が前提になります。福井はどこに泊まる?にも書きましたが、ここは「泊まって、宿から出ない」という組み方がいちばん快適な土地です。
宿を探すときは、じゃらんなどでカニ会席のプランを条件に絞ると比べやすくなります。そのとき見るべきなのは、カニが1杯まるごと付くのか、部位ごとなのか、そしてタグ付きかどうかです。同じ「カニ付きプラン」でも中身はかなり違います。
漁港に近い民宿タイプと、あわら温泉の旅館タイプでは、雰囲気も価格帯も変わります。カニだけが目的なら民宿、温泉も楽しみたいなら旅館、と分けて考えるとわかりやすいです。
関西方面から行くなら、城崎温泉も同じ時期にカニの季節を迎えます。日本海側のカニ宿という点では選択肢のひとつになります。
正直な注意点
期待しすぎないための話も書いておきます。
まず、カニは獲れない日があります。 冬の日本海は時化ます。漁に出られなければ水揚げはありません。宿は在庫や生簀で対応しますが、「その日に揚がった特別なカニ」を確約できるものではありません。解禁直後や大時化のあとは、特に流通が読めなくなります。
次に、サイズと価格は大きく振れます。 同じ越前がにでも、大きさによって値段は何倍も変わります。予算を決めてからプランを見るほうが、迷いが減ります。
そして冬の移動です。雪の可能性がある地域なので、車で行くなら冬タイヤは必須ですし、電車やバスも遅れることがあります。到着時間には余裕を持たせてください。冬の日本海側の宿の選び方は雪見露天風呂に泊まるならも参考になります。
目的別・越前がにに行く時期の選び方
整理します。
- せいこがにを食べたい → 11月6日〜12月31日。ここしかない
- 水がに(ずぼがに)を食べたい → 2月19日〜3月20日。30日間だけ
- 2種類食べ比べたい → 11〜12月、または2月下旬以降
- 価格を抑えたい → 年明け以降。ただしせいこがにはない
- 解禁の熱気を味わいたい → 11月上旬。越前漁港は解禁当日に初競りがある
- とにかく雄の越前がにを食べられれば十分 → 11月から3月20日までいつでも
まとめ
越前がには、11月6日に解禁されて3月20日に終わります。でもその中に、3つの別々の窓があります。
せいこがには56日間、水がには30日間。この2つは、狙って行かないと絶対に食べられません。しかもせいこがにの時期は、価格がいちばん高い時期と完全に重なります。
「冬にカニを食べに行く」という漠然とした計画は、実のところ3択です。何を食べたいかを先に決めれば、行く月は自動的に決まります。あとは宿を早めに押さえるだけです。
漁期・価格・まつりの日程はいずれも変わることがあるため、計画を固める前に福井県や地元の観光協会の公式サイトで最新の情報を確認してください。
宿の目星がついたら、楽天トラベルやじゃらん、一休.com、Booking.comなどで見比べてみてください。同じカニ付きプランでも、杯数や部位、タグの有無で中身はかなり違います。
よくある質問
Q. 越前がにの解禁はいつですか?いつまで食べられますか?
解禁は毎年11月6日の午前0時で、雄の越前がにの漁期は翌年3月20日までです。ただし雌のせいこがには12月31日までと短く、脱皮後の水がに(ずぼがに)は2月19日から3月20日までの約30日間しか獲れません。つまり行く時期によって食べられる種類が変わります。漁期は年によって変更されることもあるため、計画前に公式サイトで確認してください。
Q. せいこがには年明けでも食べられますか?
漁は12月31日で終わります。ただし年末に水揚げされたものが生簀などで保存され、1月中旬ごろまで提供される場合もあります。確実に食べたいなら、漁期内の11月から12月に予定を組むのが確実です。年明けに狙う場合は、提供があるかどうかを宿や店に直接確認してから予約するのが安全です。
Q. 越前がには何月に行くのがいちばんお得ですか?
価格だけで言えば年明け以降です。11月はシーズン序盤で身入りが安定しているうえ、年末の贈答需要が重なるため高値になりやすく、年が明けると比較的落ち着きます。さらに2月下旬から解禁される水がには、脱皮後のカニで価格が手ごろです。ただし年明け以降はせいこがにが食べられないため、何を食べたいかによって「お得」の意味は変わります。




