桜の旅は、日程を決めるのが難しいです。
ソメイヨシノの見頃はだいたい1週間ほど。宿を早く押さえれば咲いていない、遅く動けば散っている。しかも雨が一度降れば、それで終わってしまうこともあります。
その点、河津桜はかなり事情が違います。1月下旬から咲きはじめて、3月上旬まで楽しめる。1か月以上あるので、日付を当てにいける数少ない桜です。
ただし、別の難しさがあります。河津の町に、宿がほとんどないのです。
この記事では、河津桜を見にいくときに宿をどこへ取るか、そして日帰りでは持ち帰れないものは何かを整理します。
河津桜は「日付を当てにいける」めずらしい桜
まず、この桜の性質から。
河津桜は早咲きの品種で、例年1月下旬に咲きはじめ、2月中旬から下旬に見頃を迎えます。河津桜まつりは2月上旬から3月上旬にかけて、およそ1か月間開催されます。
咲いている期間が長いだけではありません。河津桜は一重の花で、ソメイヨシノほど雨風で花びらが散らないと言われています。つまり、天気に一度の失敗が許される桜です。
これは宿選びに直結します。ソメイヨシノなら「早く取ると咲いていないかもしれない」という不安がつきまといますが、河津桜は見頃の幅が広いぶん、早めに押さえても外れにくい。桜の旅としては、かなり組み立てやすい部類です。
繁忙期に直前割が出にくい理由は直前予約と早割のどちらが得かに書いたとおりで、この時期の伊豆は完全に早割側です。日程を当てられる桜なら、早く動かない理由がありません。
もちろん、開花は年によって1〜2週間ほど前後します。咲きはじめや散り際の風景もそれはそれで美しいのですが、満開を狙うなら、直前に公式の開花情報を確認して微調整するくらいのつもりでいてください。
100万人が来るのに、河津町に宿はほとんどない
次に、この記事の本題です。
河津桜まつりの会場は、河津川の河口から上流へ向かうおよそ4kmの道。ここに約850本の桜が並びます。町全体では約8,000本が咲くと言われていて、期間中の来訪者は100万人規模です。
アクセスもいいです。会場は河津駅から歩いて5分ほど。東京駅から直通の特急に乗れば、乗り換えなしでたどり着けます。
問題は、河津が小さな町だということです。100万人が訪れても、その全員を泊められるだけの宿はありません。だから多くの人が日帰りで来ますし、泊まる人は町の外に宿を取ります。
つまり河津桜の宿選びは、「河津のどこに泊まるか」ではなく、「伊豆急の沿線のどこに泊まるか」という問いになります。ここが、他の桜の名所といちばん違うところです。
夜桜は、日帰りの外側にある
そして、泊まるかどうかを決めるいちばん大きな要素が夜です。
まつり期間中は、河津川沿いの2か所で夜桜のライトアップが行われます。時間は18時から21時まで。河津駅前の橋から下流にかけての区間と、温泉会館の裏手のあたりです。
ここで距離を思い出してください。東京から河津までは、直通の特急でおよそ2時間半から2時間40分。新幹線で熱海まで出て伊豆急に乗り換えるルートでも、熱海から1時間20分ほどかかります。
18時に灯りがつくのを見て、21時まで粘って、それから東京へ帰る。計算すると、家に着くのは日付が変わる頃です。しかも夕方以降の東京方面の直通列車は限られます。現実的には、日帰りの人はライトアップが始まる前に帰ることになります。
これがどれくらい効いているか、わかりやすい数字があります。まつりの駐車場料金が、日中と夜間で大きく差をつけられているのです。 夜間は日中の何分の一かに設定されている年があります。
料金というのは、需要にあわせて決まります。夜が安いということは、夜は空いているということです。町が価格で「この時間帯は人が少ないですよ」と教えてくれているようなものです。
100万人が押し寄せる桜まつりで、空いている時間帯がある。しかもそれが、いちばん幻想的な時間帯にある。ここに泊まる意味があります。
宿をどこに取るか、4つの選択肢
では、具体的にどこへ取るか。伊豆急の路線に沿って、北から南まで4つに分けて考えます。
河津・今井浜
会場のすぐそば、または隣の駅の一帯です。
数は多くありませんが、条件はいちばんいいです。夜桜を見てから歩いて宿に戻れますし、翌朝、人がまだ少ない時間帯にもう一度桜並木を歩けます。朝の桜並木は、日中とはまったく別の場所のように静かです。
弱点は、とにかく取りにくいこと。まつりの期間は早い段階で埋まります。ここを狙うなら、開花情報を待たずに動くくらいでちょうどいいです。
稲取・熱川
河津から伊豆急で北へ十数分の温泉地です。
このあたりは宿の数がぐっと増えます。海沿いの温泉宿が多く、河津へは電車ですぐ。夜桜のあとに戻ってきて温泉に入る、という一日が組めます。桜と温泉を両方取りたいなら、現実的な落としどころです。
ただし電車の本数は都市部ほど多くないので、夜に戻る時間の便は先に確認しておいてください。
下田
河津から南へ十数分。伊豆急の終点にあたる街です。
宿も飲食店もまとまっていて、街としての機能があります。桜以外にも見どころがあるので、1泊2日で桜と街歩きを組み合わせたい人に向いています。河津とは反対方向なので、まつりの人の流れから少し外れるのも利点です。
熱海・伊東
河津から北へ1時間前後。宿の絶対数がいちばん多いエリアです。
距離はありますが、そのぶん選択肢が広く、価格帯の幅もあります。首都圏からの往復も楽です。桜は日中に見て、夜は熱海の温泉街で過ごす、という組み方なら、ここが快適です。宿を探すならじゃらんなどで熱海・伊東まで範囲を広げると、河津周辺だけを見ていたときより一気に候補が増えます。
弱点は、夜桜を見て戻るには遠いこと。ライトアップを見るなら、その日は帰りの電車を調べたうえで動いてください。
熱海に泊まる場合のエリアの選び方は、熱海はどこに泊まる?にまとめています。熱海は坂の町なので、荷物を持って歩く距離ではなく高低差で選ぶのがコツです。
混雑をどう避けるか
最後に、現実的な混雑対策を。
いちばん混むのは、見頃の週末の日中です。特に11時から15時あたりは、桜並木も駐車場も飽和します。ここを外すのが基本方針になります。
避け方は3つです。平日に行く、朝いちに行く、夜に行く。
このうち、朝と夜は泊まらないと選べません。日帰りだと、往復の移動時間の都合で、どうしても混雑のど真ん中に滞在時間が重なります。逆に近くに泊まっていれば、朝の空いた桜並木と、夜のライトアップの両方が手に入ります。同じ桜を、いちばん人の少ない時間帯に2回見られるわけです。
予約のタイミングの考え方は、ホテルの予約はいつが一番安いかも参考にしてください。
目的別・河津桜の宿の選び方
ここまでを整理します。
- 夜桜と朝の桜、両方見たい → 河津・今井浜。早く動く
- 桜と温泉を両方取りたい → 稲取・熱川。電車で十数分
- 桜以外も楽しみたい、街で食事したい → 下田
- 宿の選択肢を広く見たい、価格を抑えたい → 熱海・伊東
- 日中だけ見られれば十分 → 日帰りでも成立する
- 混雑を最優先で避けたい → 近くに泊まって、朝と夜に見る
まとめ
河津桜は、1か月以上咲きます。だから日程を当てにいけます。
でも、100万人が訪れる町に宿はほとんどありません。だから宿は「河津に取る」のではなく、伊豆急の沿線で「どこに取るか」を考えることになります。
そして、いちばん静かで、いちばん幻想的な時間帯は、日帰りの外側にあります。18時から21時のライトアップも、人のいない朝の桜並木も、泊まった人だけのものです。駐車場の料金が日中と夜で大きく違うという事実が、それをいちばん正直に物語っていると思います。
開催期間・ライトアップの時間・料金・列車のダイヤは、いずれも年ごとに変わります。計画を固める前に、河津町観光協会や鉄道会社の公式サイトで最新の情報を確認してください。
泊まるエリアの見当がついたら、楽天トラベルやじゃらん、一休.com、Booking.comなどで見比べてみてください。同じ河津桜でも、歩いて戻れる宿と、電車で1時間の宿では、見られる時間帯がまったく違います。
よくある質問
Q. 河津桜の見頃はいつですか?宿はいつ予約すればいいですか?
例年1月下旬に咲きはじめ、2月中旬から下旬に見頃を迎えます。まつりは2月上旬から3月上旬にかけて約1か月間開催されます。ソメイヨシノと違って見頃の幅が広く、一重の花で雨風にも比較的強いため、早めに宿を押さえても外れにくいのが特徴です。まつり期間の週末は宿が埋まりやすいので、日程が決まっているなら早く動くほうが選択肢が残ります。開花は年によって1〜2週間前後するため、直前に公式の開花情報を確認して調整してください。
Q. 河津桜は日帰りで見られますか?
日中に見るだけなら日帰りで見られます。東京駅から直通の特急でおよそ2時間半から2時間40分、会場は河津駅から徒歩5分ほどです。ただしライトアップは18時から21時までで、これを見てから東京へ帰ると深夜になります。夕方以降の直通列車も限られます。また、日帰りだと滞在時間がいちばん混雑する日中と重なりやすいという問題もあります。夜桜や朝の空いた時間を狙うなら、近くに泊まるほうが確実です。
Q. 河津に宿が取れない場合、どこに泊まるのがいいですか?
伊豆急の沿線で選ぶことになります。夜桜を見て戻りたいなら、稲取や熱川といった北側の温泉地が現実的で、電車で十数分の距離です。街での食事や桜以外の観光も楽しみたいなら、南側の下田が便利です。宿の選択肢を広く見たい場合は熱海や伊東まで範囲を広げると候補が一気に増えますが、河津までは1時間前後かかるため、夜桜を見る日は帰りの電車の時間を確認しておいてください。




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