熱海は、東京から新幹線でおよそ40分。在来線でも2時間かかりません。日帰りで温泉に入って帰ってくることも普通にできる距離です。

それなのに、宿の数がやたらと多い。しかも週末はよく埋まります。

理由はいくつもありますが、宿選びという観点でいちばん効いてくるのは、熱海が坂の町だということです。この記事では、その高低差から泊まる場所を逆算する方法を整理します。

熱海の宿選びは「駅から何分」では決まらない

熱海に行ったことがある人なら、たぶん一度は思ったはずです。「思ったより坂がきつい」と。

熱海駅は高台にあります。そこから海に向かって、町全体が斜面のように下っていく地形です。海沿いのサンビーチや親水公園、繁華街の熱海銀座は、駅よりずっと低いところにあります。

つまり、駅から海側の宿へ向かうときは、ずっと下り。気持ちよく歩けます。ところが帰りは、そのぶんずっと上りになります。荷物を持っていれば、なおさらです。

これがどれくらい実感を伴う話かというと、予約サイトに載っている宿の説明文に、宿自身が「坂の途中にあるため、足の悪い方はタクシーがおすすめです」と書いているくらいです。宿の側も、坂は事前に伝えておくべき情報だと考えている、ということだと思います。

だから熱海では、「駅から徒歩12分」という表示を額面どおりに受け取らないほうがいいです。同じ12分でも、下る12分と上る12分では、体感がまったく違います。

宿を選ぶときに見るべきなのは、距離ではなく方向。駅から下るのか、上るのか、それとも別の駅が最寄りなのか。ここから4つのエリアを見ていきます。

熱海駅前に泊まる

まずは駅前。熱海駅を出てすぐの一帯です。

このエリアの強みは、坂の問題がほぼ発生しないことです。駅を出て数分でチェックインでき、翌日も駅まで歩くだけ。荷物を持って坂を上り下りする場面がありません。

駅前には平和通り商店街と仲見世商店街が伸びていて、干物や温泉まんじゅう、食べ歩きの店がぎっしり並んでいます。夕方まで賑やかで、夜は静かになる、というメリハリのある一帯です。商店街の中には手湯もあって、荷物を置く前にちょっと温泉に触れられます。

弱点は、海が見えないことです。熱海に来て海の見えない部屋に泊まるのはもったいない、と感じる人には向きません。また、海沿いまでは下り坂を10分ほど歩くので、夜に海を見に行って戻ってくるなら、その上りを一度は経験することになります。

シティホテルやビジネスホテルが中心で、価格を抑えやすいのもこのエリアです。1泊で温泉と食べ歩きだけできれば十分、荷物を軽く扱いたい、という人には駅前がいちばん合理的です。

海沿い・サンビーチ周辺に泊まる

次が、海沿いのエリア。サンビーチや親水公園に面した一帯です。

強みは、言うまでもなく海です。部屋から相模湾が見えて、朝は海から昇る光で目が覚めます。ビーチまで歩いて数分なので、朝の散歩も気軽にできます。そして後述しますが、花火の日はこのエリアが特別な意味を持ちます。

繁華街の熱海銀座もこのあたりなので、夜に外へ食べに出るのも簡単です。

弱点は、やはり帰りの坂です。駅から下って12分から15分ほどの位置にある宿が多く、行きは楽ですが、チェックアウト後に荷物を持って駅まで上ることになります。距離としては大したことがないのに、疲れ方が違います。

これは対策できます。宿に送迎があるか予約前に確認しておくこと、それが無ければ帰りだけタクシーを使うと決めておくこと。この2つで、体感はかなり変わります。熱海はタクシーの台数もそれなりにあるので、荷物が重い日は最初から使うと割り切るのが賢いです。

高台・錦ヶ浦のリゾートに泊まる

3つめが、高台のリゾートです。錦ヶ浦の断崖に建つホテルや、熱海駅から車で15分ほどの丘の上にある宿がこれにあたります。

強みは眺望です。海と町を見下ろす高さにあるので、部屋からの景色が別格になります。夜は熱海の街明かりが眼下に広がります。

そして重要なのが、このタイプの宿は館内で完結するように作られていることです。温泉、食事、ラウンジがそろっていて、外へ出る必要がありません。坂の町で外出のたびに上り下りするストレスがない、というのは実はかなり大きな利点です。

弱点は、徒歩圏ではないこと。駅からは送迎バスかタクシーが前提になります。夜に商店街をぶらぶらしたい、地元の居酒屋に行きたい、という過ごし方には向きません。ここに泊まるなら「その宿で完結させる」と決めてしまうほうが満足度が高くなります。

記念日や、久しぶりの旅行でしっかり滞在したいときには、この高台型がよく効きます。ワンランク上の一軒を探すなら、一休.comのような高級宿に強いサイトで眺望のある宿を見てみると、イメージがつかみやすいと思います。

南熱海・多賀・網代に泊まる

4つめが、熱海駅から少し南へ離れたエリアです。伊豆多賀や網代のあたりで、南熱海と呼ばれます。

ここは熱海駅が最寄りではありません。JR伊東線の伊豆多賀駅や網代駅が最寄りで、駅から徒歩数分から10分ほどという宿があります。熱海駅からタクシーだと20分前後です。

強みは静けさと食事です。繁華街の喧騒から離れていて、海沿いに小ぢんまりした宿が点在しています。地魚を売りにした宿が多く、金目鯛や舟盛りといった料理を目当てに来る人も少なくありません。海の見える露天風呂を持つ宿の比率も高いエリアです。

弱点は、移動が電車前提になること。熱海の商店街や花火会場へは、電車かバスで戻ることになります。本数はそれほど多くないので、夜に熱海の街へ出るつもりなら時刻表を確認しておいてください。

「熱海に行く」というより「熱海の近くの海辺の宿でのんびりする」という感覚に近いです。人混みが苦手な人、料理を旅の主役にしたい人には、この南熱海が向いています。

熱海の宿は「日付」で埋まる

もうひとつ、熱海特有の事情があります。

熱海海上花火大会は、年に十数回も開催されます。2026年は春から冬まで15回の予定が組まれていて、夏だけのイベントではありません。そして、その開催日は宿がはっきり埋まります。

つまり熱海の宿選びには、「どのエリアか」の前に「その日は花火があるかどうか」という変数があります。花火を見たいなら早く押さえる必要がありますし、逆に静かに過ごしたいなら花火のない日を選ぶ、という決め方もできます。

宿によっては、花火の日の予約を1年前から電話で受け付けているところもあります。人気の宿の海側の部屋は、それくらいの競争になるということです。花火の日をねらうなら、ホテルの予約はいつが一番安いか直前予約と早割のどちらが得かの考え方でいえば、迷わず早割側です。

花火の日に泊まるとどう変わるかは、熱海の花火の日は泊まるべき?のほうで詳しく書いています。

目的別・熱海の宿の選び方

ここまでを整理します。

  • 荷物を軽く扱いたい、1泊でサクッと温泉と食べ歩き → 熱海駅前
  • 海の見える部屋がいい、朝の散歩を楽しみたい、花火を見たい → 海沿い・サンビーチ周辺
  • 眺望重視、館内で完結させたい、記念日の滞在 → 高台・錦ヶ浦
  • 静かに過ごしたい、料理を主役にしたい → 南熱海・多賀・網代
  • 体力に不安がある、小さな子ども連れ → 駅前か、送迎のある宿
  • 夜に街へ出たい → 駅前か海沿い。高台と南熱海は向かない

まとめ

熱海の宿選びで見るべきなのは、駅からの距離ではなく高低差です。

駅が高いところにあり、海が低いところにある。この地形のせいで、行きは楽でも帰りがきつい、ということが普通に起こります。海沿いに泊まるなら帰りの上りを、高台に泊まるなら送迎の有無を、南熱海に泊まるなら電車の本数を、それぞれ先に確認しておく。それだけで、当日の疲れ方がかなり変わります。

東京から40分で来られてしまう町なのに、これだけ宿があるのは、夜と朝に見せる顔が昼とまったく違うからだと思います。海から昇る朝日も、夜の海に映る町明かりも、日帰りでは持ち帰れません。

運賃や所要時間、宿の送迎の有無は変わることがあるため、計画を固める前に公式サイトで確認してください。

泊まるエリアの見当がついたら、楽天トラベルじゃらん一休.com、Booking.comなどで見比べてみてください。同じ熱海でも、駅前と海沿いと高台では、朝に見える景色がまるで違います。

よくある質問

Q. 熱海は日帰りでも楽しめますか?泊まる意味はありますか?

日帰りでも十分楽しめます。東京から新幹線でおよそ40分、在来線でも2時間かからないので、温泉と食べ歩きだけなら日帰りで完結します。ただ、熱海の魅力がいちばん出るのは夜と朝です。海に映る町明かりや、相模湾から昇る朝日は日帰りでは見られません。花火の開催日にあたる場合も、終了後の混雑を考えると泊まるほうが快適です。日帰りか宿泊かは、昼の熱海だけで満足できるかどうかで決めるとよいと思います。

Q. 熱海は坂がきついと聞きますが、どのエリアなら歩きやすいですか?

いちばん歩きやすいのは熱海駅前です。駅を出てすぐの一帯なので、荷物を持って坂を上り下りする場面がほとんどありません。海沿いのエリアは駅から下って10分から15分ほどで、行きは楽ですが帰りが上りになります。荷物が多い場合や体力に不安がある場合は、宿の送迎の有無を予約前に確認するか、帰りはタクシーを使うと決めておくと安心です。高台のリゾートは徒歩圏ではないため、送迎かタクシーが前提になります。

Q. 花火の日に熱海に泊まるのは難しいですか?

人気の日は早く埋まります。熱海海上花火大会は年に十数回開催されますが、その開催日は宿の予約が集中します。特に海の見える部屋は競争が激しく、宿によっては1年前から電話で予約を受け付けているところもあります。花火を目当てにするなら、日程が発表された時点で動くのが確実です。逆に静かに過ごしたい場合は、開催日を避けて予約するという選び方もできます。開催日程は年ごとに変わるので、公式サイトで確認してください。