和歌山県の那智勝浦町にある勝浦漁港は、延縄(はえ縄)漁で獲れた生まぐろの水揚げ量が日本一とされる港です(出典:那智勝浦町公式サイト)。

その港では、毎朝まぐろの競りが行われています。黒光りする大きなまぐろが市場の床にずらりと並び、買い付けの人たちが動き回る。その様子は、観光客でも見学することができます。

ただし、ひとつ問題があります。競りが始まるのは朝7時。そして大阪からは、特急で3時間半から4時間かかります。

この記事では、勝浦の競りを見るために何が必要なのかと、見たあとの半日の使い方を整理します。

「生まぐろ」とは、一度も冷凍していないまぐろ

まず、勝浦のまぐろが何なのかを押さえておきます。

那智勝浦町の観光公式サイトによると、生まぐろとは「一度も冷凍していないまぐろ」のことです。私たちがふだん口にするまぐろの多くは、遠洋で獲って船上で冷凍されたもの。解凍の技術が進んでいるので十分においしいのですが、冷凍を経ないまぐろには、しっとりとした食感と、雑味のない旨味があります。

勝浦のまぐろは、延縄漁という漁法で獲られています。長い縄にたくさんの釣り針をつけて流す方法で、一本ずつ釣り上げるため、魚が傷みにくい。乱獲を防ぎ資源に配慮した漁法としても知られています。

メバチマグロ、ビンナガマグロ(ビンチョウ)、キハダマグロなど、季節によって並ぶ種類が変わります。

競りは朝7時から

勝浦漁港の競りは、朝7時ごろから始まります。

水揚げされたまぐろが市場の床に並べられ、入札方式で競り落とされていきます。鮮度が命なので、落札されたまぐろはすぐに運び出され、加工場で解体されて出荷されていきます。つまり、市場の床からまぐろがみるみる減っていくのです。

ある旅行者のブログに、宿をチェックアウトしてから漁港に向かったら、市場にはもう誰もいなかった、という話が書かれていました。チェックアウトの時間は多くの宿で10時前後。その頃には、競りはとっくに終わっています。

見学の方法は2つ

競りを見学する方法は、大きく2つあります。

展望スペースから見る:漁港のすぐそばに、まぐろの資料館と展望スペースを兼ねた施設「TSUNAGOOD(つなぐっど)」があります。朝7時に来れば、市場で始まる競りを上から見学でき、入場は無料です。予約も不要なので、気軽に立ち寄れます。

ガイドツアーに参加する:公認ガイドと一緒に、市場の2階から競りを見学する有料のツアーもあります。延縄漁の仕組みや入札の流れを、目の前の様子にあわせて解説してもらえます。イヤホンガイドを使うので、市場の喧騒の中でも説明が聞き取れます。食事付きのコースもあり、その場合の終了時刻は8時30分ごろ。要予約で、毎週火曜日はツアーがありません。

どちらの場合も、市場には休みの日があります。勝浦市場のカレンダーには「全休」と「太物休」の日が設定されていて、その日は競りが行われません。行く前に必ず市場カレンダーを確認してください。 せっかく早起きして行ったのに休みだった、というのがいちばん悲しいパターンです。

大阪から4時間、という距離

ここで、アクセスの話に戻ります。

那智勝浦町の観光公式サイトによると、新大阪から紀伊勝浦駅までは、JRの特急で3時間30分から4時間。車でも大阪からおよそ3時間30分かかります。

朝7時の競りに間に合わせるためには、大阪を夜中の3時ごろに出る計算になります。特急の始発ではとても間に合いません。車で夜通し走れば物理的には可能ですが、紀伊半島の山道を眠い頭で運転するのは、正直すすめられません。

和歌山の宿選びを整理した記事でも書きましたが、和歌山の南部は「関西なのに遠い」エリアです。その遠さが、勝浦の朝をいちばん強く縛っています。

結論ははっきりしていて、勝浦の競りを見たいなら、前の晩に勝浦に泊まる以外の方法はほぼありません。 漁港の周辺には温泉宿が集まっているので、宿から歩いて市場へ向かうこともできます。

競りのあとの半日が、いちばんおいしい

朝7時に競りを見ると、8時にはもう手が空きます。ここからの過ごし方が、勝浦に泊まったことの本当のご褒美です。

朝のうちに生まぐろを食べる

漁港の隣には「勝浦漁港にぎわい市場」があり、生まぐろの刺身や丼、寿司をその場で食べられます。海に面したウッドデッキもあり、天気がよければ潮風の中で食事ができます。まぐろの解体ショーが行われる日もあります。

町の中には、生まぐろを扱う店や、無人の販売所まであります。朝に市場で見たまぐろが、数時間後には町の店に並んでいる。その距離の近さは、産地に泊まった人だけが実感できるものです。

午前中に那智山へ上がる

食事を済ませたら、那智の滝と熊野那智大社へ向かうのがおすすめです。紀伊勝浦駅から那智山まではバスで30分ほど。

那智の滝は落差133メートルと、一段の滝として日本一とされ、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部です。熊野那智大社と青岸渡寺へは467段の石段が続くので、朝の涼しい時間のうちに上ってしまうのが楽です。

大阪から日帰りでやってくる人たちが那智山に着くのは、どうしても昼前後になります。競りを見たあとの午前中に那智山にいられるというのは、勝浦に泊まった人だけの時間の使い方です。

午後には大阪へ帰れる

那智山から戻って昼過ぎの特急に乗れば、夕方には大阪に着きます。1泊2日でも、夜は温泉、朝は競りと生まぐろ、午前中に那智の滝と大社、という流れがきれいに収まります。

1月のまぐろ祭り

冬に訪れるなら、覚えておきたいのが毎年1月に開かれる「まぐろ祭り」です。

目の前で生まぐろを一頭まるごとさばく「一頭造り」や、まぐろの重さを当てるクイズ、まぐろ汁や刺身のふるまい、生まぐろの即売などが行われ、港が一日にぎわいます。冬の南紀は温暖で、雪の心配もほとんどありません。

開催日は年によって変わるので、那智勝浦町の観光公式サイトで最新の情報を確認してください。祭りの前後は宿も動くので、日程が決まったら早めに押さえるのが安心です。

市場は、仕事の場所

最後に、ひとつだけ。

勝浦の市場は観光施設ではなく、漁師さんや仲買人さんたちの仕事場です。見学スペースやツアーは、その仕事を邪魔しない範囲で開かれています。決められた場所から見学すること、案内に従うこと、撮影のルールを守ること。ガイドツアーに参加すれば、そのあたりも含めて丁寧に教えてもらえます。

仕事の現場を見せてもらっている、という感覚で行くと、朝の市場の空気がいっそう面白く感じられるはずです。

まとめ

  • 勝浦漁港は延縄漁による生まぐろの水揚げ日本一とされる。生まぐろは一度も冷凍していないまぐろのこと
  • 競りは朝7時ごろから。落札されたまぐろはすぐに運び出される
  • 見学は無料の展望スペース「TSUNAGOOD」か、要予約の有料ガイドツアー(火曜は休み)
  • 市場には休みの日がある。行く前に必ず市場カレンダーを確認
  • 新大阪から紀伊勝浦まで特急で3時間半から4時間。朝7時に間に合わせるには前泊しかない
  • 競りのあとは生まぐろの朝食、午前中に那智の滝と熊野那智大社。昼過ぎの特急で大阪へ戻れる
  • 毎年1月にまぐろ祭り。開催日は公式で確認

早起きして見る競りの時間は、実際には1時間もありません。でも、その1時間のために4時間かけて前の晩に移動する。旅の計画としては非効率に見えますが、そういう朝があると、旅全体の記憶の残り方が変わります。

日程が決まったら、楽天トラベルじゃらんなどで、勝浦漁港の周辺の宿を見比べてみてください。港まで歩いて行けるかどうかを基準にすると、朝がぐっと楽になります。

よくある質問

Q. 勝浦のまぐろの競りは、予約しないと見られませんか?

予約なしでも見学できます。漁港のそばにある展望スペース「TSUNAGOOD」からは、入場無料で競りの様子を見ることができます。一方、市場の2階から公認ガイドの解説つきで見学する有料のガイドツアーは要予約です。仕組みを詳しく知りたいならツアー、気軽に雰囲気を見たいなら展望スペース、と使い分けてください。いずれも市場の休みの日は競りが行われないので、事前に市場カレンダーを確認しておきましょう。

Q. 競りは毎日やっていますか?

毎日ではありません。勝浦の市場には「全休」と「太物休」の日があり、その日は競りが行われません。また、ガイドツアーは毎週火曜日が休みです。旅行の日程を決める段階で、市場カレンダーを確認しておくことをおすすめします。せっかく前泊して早起きしたのに競りがなかった、ということを防げます。

Q. 生まぐろはどこで食べられますか?

漁港の隣にある「勝浦漁港にぎわい市場」で、刺身や丼、寿司などをその場で食べられます。町の中にも生まぐろを扱う飲食店や販売所が点在していて、那智勝浦町の観光公式サイトでは店舗をまとめたマップも公開されています。朝の競りを見たあとに食べに行くと、ついさっき見たまぐろとのつながりが感じられて、いっそうおいしく感じるはずです。