函館は、朝市も、元町の坂も、夜景も、五稜郭も、だいたい半日ずつあれば回れてしまう街です。エリアどうしも近い。だからこそ「どこに泊まっても同じでは?」と思いがちなのですが、実際に一泊してみると、宿の場所で疲れ方がまったく変わります。

理由はシンプルで、函館は観光のヤマが朝と夜の両端にあるからです。朝市は朝しかやっていませんし、夜景は当然、夜にしか見られません。そして日中は市電1本でどこへでも行けてしまう。つまり、宿選びで差がつくのは日中ではなく、朝と夜なのです。

この記事では、函館の主要な宿泊エリアを4つに分けて、どんな旅に向いているかを整理します。北海道全体でどのエリアに泊まるかという話は、北海道はどのエリアに泊まる?のほうでまとめています。

函館の宿選びは「朝と夜」から逆算する

先に結論めいたことを書いておきます。函館の宿は、次の2つのどちらを優先するかで決まります。

一つは、朝市に朝いちで行きたいかどうか。函館朝市はJR函館駅から徒歩1分ほどの場所に約250店が集まる市場で、営業は1月から4月がおおむね6時から14時ごろ、5月から12月は5時からと、とにかく朝が本番です。人気の品は昼を待たずに売り切れることもあります。

もう一つは、函館山の夜景から帰る道のりを短くしたいかどうか。夜景は日没の30分後あたりがいちばん美しく、同時にいちばん混みます。ロープウェイの公式案内でも、この時間帯は上りで30分以上、下りは多いときで1時間程度の待ちが出ると説明されています。真っ暗な山頂で1時間並んで下りてきたあと、そこから宿まで1時間かかるのか、10分で着くのかは、旅の体力にはっきり効きます。

日中は、正直どこに泊まってもそれほど変わりません。だからこの2点から逆算するのが、いちばん外しにくい決め方です。

函館の交通は市電が背骨

エリアの話に入る前に、市電の構造だけ押さえておくと、この先の話が一気に分かりやすくなります。

函館市電は2つの系統が走っていて、湯の川から五稜郭公園前、函館駅前、十字街までは共通の線路を通ります。日中は7分間隔、十字街から先で線路が分かれてからは14分間隔での運行です。つまり、主要な宿泊エリアはすべて1本の線の上に並んでいます。

運賃は距離に応じて変わり、2kmまで250円、4kmまで270円、7kmまで290円、7km超で300円。函館駅前から湯の川温泉までで300円ほどです。2025年12月に改定されているので、最新の運賃は函館市の公式ページでご確認ください。1日乗車券や24時間乗車券もあるので、市電を何度も使う日は検討する価値があります。

新幹線で来る場合、終点の新函館北斗駅から函館駅までは、はこだてライナーで15分から22分ほど、運賃は470円ほど(2026年7月時点)。飛行機なら、函館空港から函館駅前までバスで20分ほどです。

函館駅前・朝市周辺:朝が主役の旅なら

函館駅の目の前に朝市が広がっているという立地は、他の街ではなかなかありません。宿を出て徒歩1分で海鮮丼、というのは、寝起きの人間にとって想像以上に強い武器です。

このエリアは、ビジネスホテルから大浴場付きのホテルまで選択肢が幅広く、価格帯も選べます。市電の起点でもあり、バスターミナルも駅前なので、翌日に大沼や札幌へ移動する旅程とも噛み合います。函館港側の部屋なら、部屋から港の夜景が見えるホテルもあります。

弱点を挙げるなら、夜の函館山からの帰りに市電やバスで一区間ぶん戻ることになるのと、街としての情緒は元町側に譲ること。とはいえ、朝市を朝いちで狙うなら、ここが最短です。

向いている旅行スタイル:朝市が最優先、1泊の短い日程、翌日に列車やバスで移動する、公共交通だけで動きたい。

元町・ベイエリア(十字街周辺):夜景の帰りが最短になる

坂道と教会群、赤レンガ倉庫。函館らしい風景の密度でいえば、このあたりが一番濃いエリアです。

そして実用面での最大の利点が、函館山ロープウェイの山麓駅に近いこと。市電の十字街停留場から山麓駅までは徒歩8分ほどで、つまり夜景を見て下りてきたあと、歩いて宿に帰れます。前述のとおり、下りのロープウェイで1時間待つ可能性がある夜に、これは効きます。混雑を避けるなら、ロープウェイ公式が案内しているとおり、夜景になった時間の1時間後あたりを狙うと比較的スムーズなのですが、そのぶん帰りが遅くなるので、なおさら宿の近さが効いてきます。

宿は、リノベーションされた小規模ホテルや、港と街並みを見下ろす立地のホテルが中心。記念日の旅で、部屋から夜景が見える宿を狙いたいなら、一休.comのように上質な宿を絞り込みやすいサイトで、眺望の条件から探すのが早いです。

弱点は、坂の街なのでスーツケースを引いての移動が地味にしんどいことと、朝市までは市電で少し戻る必要があること。

向いている旅行スタイル:夜景をゆっくり見たい、街の情緒を重視、カップルや記念日の旅、荷物が少なめ。

湯の川温泉:空港から近い、旅程の初日か最終日に

函館は、市街地の東側に温泉街を持っている珍しい街です。湯の川温泉は函館空港から約4.1kmと近く、タクシーで2,000円ほど、空港シャトルバスも走っています。市電なら函館駅前から300円ほど、20分強で着きます。

ここの使いどころははっきりしていて、旅程の初日か最終日に置くと動線が締まる、ということです。夕方に飛行機で着いてそのまま温泉に入る、あるいは最終日の朝に温泉に浸かってそのまま空港へ、という組み立てなら、移動の無駄がほぼ出ません。逆に、中日に湯の川へ泊まると、夜景や朝市のたびに市電で往復することになり、市電の距離ぶんだけ毎回の移動が増えます。

宿は大型の温泉ホテルや旅館が中心で、食事付きプランが充実しているのも特徴です。「観光は半日でいいから、あとは宿でのんびりしたい」という旅なら、むしろここ一択でもいいくらいです。

向いている旅行スタイル:温泉が目的、飛行機での往復、家族旅行、宿でゆっくり過ごしたい。

五稜郭周辺:地元の暮らしに近い側

五稜郭公園と五稜郭タワーがあるエリアで、函館駅前から市電で16分ほど、290円ほど。観光地というより、函館の人が普段買い物をしたり食事をしたりする街です。

宿の価格が比較的落ち着いていて、飲食店も観光価格から少し離れる傾向があります。桜の季節に五稜郭を目当てにするなら、この近さは大きな武器です。

一方で、朝市からも函館山からも一区間ぶん離れるため、朝と夜の両方を狙う旅とは相性が良くありません。「観光は五稜郭中心」「地元の店で飲みたい」「宿代を抑えたい」といった目的がはっきりしている人向けのエリアです。

向いている旅行スタイル:桜の季節、地元の空気を味わいたい、コストを抑えたい、2泊以上でゆっくり回る。

夜景の時間から、その日の宿を決める

もう一度、夜景の話に戻ります。ここが函館の宿選びで一番差がつくところだからです。

函館山ロープウェイは、山麓から山頂まで約3分。運賃は大人往復1,800円、片道1,200円です。営業時間は4月20日から9月30日が始発10時・上り最終21時30分・下り最終22時、10月1日から4月19日は上り最終20時30分・下り最終21時(最新は公式サイトでご確認ください)。日没の時刻は季節で大きく変わり、冬は16時ごろ、夏は19時ごろが目安です。

ここから逆算すると、こうなります。冬に訪れるなら夜景は17時前後に見られるので、そのあと夕食、という流れが組みやすい。夏は夜景が20時近くになるため、先に夕食を済ませてから山に上がることになり、宿に帰り着くのは22時を回ることもあります。夏の函館で「夜景のあとが遠い宿」を選ぶと、最終日の朝がつらくなります。

なお、函館山の登山道は例年11月上旬から4月中旬ごろまで冬期通行止めになり、夕方から夜にかけてはマイカー規制もかかります。レンタカーで山頂まで、と考えている人は、時期と時間帯を必ず公式で確認してください。ロープウェイも法定点検で運休する期間があります。

日数別に考えると、こうなります

1泊なら、函館駅前か元町・ベイエリアに絞るのが無難です。朝市を優先するなら駅前、夜景を優先するなら元町。両方を1泊で完璧にやろうとすると、どちらかが中途半端になります。

2泊できるなら、選択肢が一気に広がります。1泊目を元町・ベイエリアにして夜景を、2泊目を函館駅前にして朝市を、という組み方は理にかなっています。あるいは、最終日だけ湯の川温泉に泊まって、翌朝そのまま空港へ、という締め方も気持ちいいです。

宿を移すのは荷物の出し入れがある分だけ手間ですが、函館は市電で移動できる距離なので、負担は比較的軽いほうです。札幌とセットで回る場合の考え方は、札幌はどこに泊まる?にまとめてあります。

目的別・函館の宿泊エリアの選び方

ここまでを整理します。迷ったら、旅でいちばん外したくないものから選んでください。

  • 朝市を朝いちで楽しみたい、翌日に列車やバスで移動する → 函館駅前・朝市周辺
  • 夜景をゆっくり見たい、街並みの情緒を重視したい → 元町・ベイエリア(十字街周辺)
  • 温泉が目的、飛行機の初日か最終日に組み込みたい → 湯の川温泉
  • 五稜郭中心、地元の店で食べたい、宿代を抑えたい → 五稜郭周辺
  • 1泊なら駅前か元町、2泊なら組み合わせる

まとめ

函館は、市電1本で主要エリアが並んでいる、旅行者にとってとても親切な街です。だから日中の観光は、どこに泊まってもほとんど困りません。

差がつくのは、朝市が開いている朝と、夜景の帰り道の夜。この2つのうち、自分の旅でどちらが主役かを決めれば、宿のエリアは自動的に決まります。そして温泉が主役なら、湯の川を空港側の入口か出口に置く。それだけで、函館の旅はぐっと楽になります。

  • 函館は観光のヤマが朝と夜の両端にあり、日中は市電でどこからでも動ける
  • 朝市は朝5時から6時ごろに始まり、14時ごろまで。人気の品は昼前に売り切れることも
  • 夜景は日没30分後がピークで、下りのロープウェイは1時間待つこともある
  • 夜景重視なら元町・ベイエリア、朝市重視なら函館駅前
  • 湯の川温泉は空港から近い。旅程の初日か最終日に置くと動線がきれいにまとまる

エリアの目星がついたら、楽天トラベルやじゃらん一休.com、Booking.comなどで、同じ日程・同じ予算で条件を並べて見比べてみてください。予約のタイミングそのものについては、ホテルの予約はいつが一番安い?もあわせてどうぞ。

よくある質問

Q. 函館は駅前と元町、どちらに泊まるのが便利ですか?

旅の主役で決めるのが分かりやすいです。函館朝市を朝いちで楽しみたいなら、徒歩1分で行ける函館駅前が有利です。一方、函館山の夜景をゆっくり見たいなら、ロープウェイ山麓駅まで歩ける元町・ベイエリア(十字街周辺)が有利です。夜景は日没後の下りロープウェイが1時間ほど待つこともあるため、そのあと歩いて帰れる距離かどうかは、体感としてかなり大きく効きます。

Q. 湯の川温泉に泊まると、観光には不便でしょうか?

日中の観光は市電で問題なく回れます。函館駅前までは300円ほど、20分強です。ただ、朝市と夜景の両方を狙う旅だと、そのたびに市電で往復することになるため、移動が増えるのは事実です。おすすめは、旅程の初日か最終日に湯の川を置く組み方です。函館空港から約4.1kmと近いので、着いてすぐ、あるいは帰る直前に温泉に入る流れなら、移動の無駄がほとんど出ません。

Q. 函館は何泊あれば足りますか?

朝市・元町・夜景・五稜郭という定番を一通り回るなら、1泊2日でも形にはなります。ただ、夜景は天候次第で見えないこともあるため、確実に見たいなら2泊あると余裕が生まれます。2泊できるなら、1泊目を元町側で夜景、2泊目を駅前で朝市、あるいは最終日を湯の川温泉、といった組み合わせが効いてきます。大沼や松前など周辺まで足を伸ばすなら、さらに1泊足すと落ち着いて回れます。